華厳経(四) 婆娑婆陀夜天
善財童子の旅の32番から54番までをご紹介します。
さてあらかじめ言っておきますが、
ここから登場する12人は全て女性です。
32.婆娑婆陀夜天(前生が女性)
33.甚深妙徳離垢光明夜天(前生が女性)
34.喜目観察衆生夜天(前生が女性)
35.妙徳救護衆生夜天(前生が女性)
36.寂静音夜天(前生が女性)
37.妙徳守護諸城夜天(前生が女性)
38.開敷樹華夜天(前生が女性)
39.願勇光明守護衆生夜天(前生が女性)
40.妙徳円満林天(前生が比丘尼)
41.瞿夷夫人(人間の女性)
42.摩耶夫人(人間の女性)
43.天主光童女(解脱した女性)
夜天は日本でいう国つ神です。夜叉と訳することもあります。性別ははっきりしませんが、わざわざ全て前生が女性であると善財童子が断っているのですから、女神と考えるのが自然です。
善財童子を心の旅路ととらえた場合は、この12人がクライマックスになります。
実は天主光童女に会うことで善財童子は目的を達しているからです。
いずれも宇宙を司る重要な女神ばかりでここまで来ると華厳経は女性崇拝教といえるほどです。
まず婆娑婆陀夜天(バシャバダ)。
彼女の虚空に浮かぶ城に住んでいます。見た目は金色の肌に紺色の髪と瞳の東洋人。星の光明を身に着けていますので、星の神です。
彼女は危険に陥った人間を助けてくれます。人が闇夜に鬼や盗賊に襲われそうな時、海や山で遭難した時、
空が厚い雲に覆われて太陽が見えないとき(不安に押し潰されそうな時)、バシャバダ夜天は助け舟を出してくれます。
彼女は難破者には船を作ります。篝火や雷光で人を導き、道なきところに道路を敷きます。馬王・象王・狗王・阿修羅王・海神王の姿で地上に現れて人を助けてくれます。彼女は神秘の力というよりはむしろ物質的な技術の力で人を助けるのです。
そう、彼女は知恵と技術の神様です。アイコンは虚空に浮かぶタワーの篝火人を導く「灯台」です。金星の神格化であり、密教では虚空蔵菩薩に当たります。
バシャバダ夜天の前生は法慧月蓮華光という月の美しさをもつ女性でした。従って月の女神という面も持っています。かつて勝慧光という人間の娘だった時に、月から来た清浄眼夜天から教えを受けて(如来が世に出たことを知らされてですがこれは仏典特有の表現で実際には、月神から教えを受けたとみなすべき)月の教えで人々を導いたそうです。
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