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2020年10月10日 (土)

古墳はくじら?

鯨という地名が付いている古墳が多いことをご存知ですか?インターネットの検索や自分で調べた範囲では

 

  • 鯨山古墳 愛媛県今治市日高、別名串山
  • 鯨岡 茨城県行方市
  • 鯨岡 兵庫県姫路市、稲岡山古墳、住所には無いが地元では鯨岡と呼ばれている
  • 鯨岡 茨城県石岡市鯨岡町、1㎞南方に古墳群あり
  • 鯨 茨城県下妻市鯨、3㎞西方に柴崎古墳群あり、同じく北西には奥州安部氏の安部宗任を祭った宗任神社
  • 鯨ヶ丘 茨城県常陸太田市中心部、1㎞東に幡山古墳群がある、この地域は常陸国久慈郡で、久自国造の本拠地
  • くじら山 埼玉県児玉郡神川町、白岩銚子塚古墳の別名
  • 鯨井 埼玉県川越市、周辺を囲むように多数の古墳が分布
  • 久地楽 茨城県筑西市、「くじら」と読む、新治郡衙跡地、富士見古墳などがある
  • 久次良 栃木県日光市、「くじら」と読む、日光東照宮の隣地、古代豪族久次良氏の領地
  • 久白 島根県安来市。「くじら」と読む、2㎞北に塩津山古墳群、造山古墳、大成古墳がある
  • 櫛羅 奈良県御所市。「くじら」と読む、1㎞北に笛吹古墳群がある。霊山の葛城山の住所でもある。
  • 串良 鹿児島県鹿屋市串良町と鹿児島県肝属郡東串良町一帯。「くしら」と読む。唐仁大塚古墳群がある。
  • 久自神社 地図上では確認できていませんが、岡山県総社市にあるらしいです。この辺りは吉備の中心地で、日本で4位と9位の大きさを誇る古墳があります。 

 

Gyoda01

埼玉県行田市の前玉(埼玉)古墳群、関東地方最大級の古墳が並んでいます。武蔵国造が眠っているともいわれています。関連があるかどうかは不明ですが、近隣に菊池台くじら公園という名前の小さな公園があります。

 

各地の伝承を調べればもっとあるでしょう。確かに平野の中にポコッと現れる古墳は、遠目には鯨に似ています。鯨が海から泳いできて固まったといういわくのある場合もあります。古墳は大小複数固まっていることが多いですので、まるで鯨の親子が泳いでいるようです。「ほーら鯨さんだよ」と教えると、子供との史跡めぐりも楽しくなりそうです。

実は久慈郡は私が五歳まで育った場所です。常陸太田に残されている伝承はこうです。古代にはこの地域は海辺であった。常陸太田市街がある緩やかな台地は海の上からは鯨のように見えた。だから鯨ヶ丘なのだと。鯨という名前の古墳が多いことは、見た目が鯨に似ているからということで等閑視されてきました。でも本当にそうなのでしょうか。

特に気になるのは、常陸太田は久慈郡(くじぐん)の中心地であり、日本書紀にも出てくる久自国造(くじのくにのみやつこ)がいたこと。そして古代から霊山として敬われていた葛城山、そして古代豪族葛城氏の本拠地が他ならぬ櫛羅(くじら)という地名であることです。

 

「ら」というのは古代の美称である可能性があります。上のリストでも葛城山の櫛羅は櫛に羅という接尾語が付いたように見えます。鹿児島県の串良も串に良という接尾語が付いているようです。愛媛県今治市の鯨山古墳がかつては串山と呼ばれていたのも見逃せません。

 

Gyoda02

埼玉古墳。前方部から後円部を臨む。

では「くじ」とは何なのか考えてみましょう。久慈という名前の神様がいます。櫛真知命、別名を久慈真知命といいます。占いの神様と言われ、飛鳥の天香久山坐櫛真知神社、東京都青梅の武蔵御嶽神社、東京都稲城市の大麻止乃豆乃天神社(おおまとのつのてんじんしゃ)に祀られています。全国で数社しかありませんが、天香久山と武蔵御嶽山の神様であるというのは重要でしょう。稲城の大麻止乃豆乃天神社もすぐ近くに、大規模な多摩ニュータウン遺跡が発見されています。関東最大級の古代の瓦工場が発見されています。武蔵国分寺の瓦を焼いたことが判明しています。

仮に「くじ」は「くし」が訛ったものであると考えれば、手掛かりが沢山あります。串という地名は全国各地にたくさんあります。串崎、串本、漢字「串」を含む地名。その多くが長細い岬、もしくはリアス式海岸を表しています。串という地名の語源には様々な説がありますが、私は単純に考えてみました。海に尖った山が突き出しているのが、串のようだから。あるいは沢山の山が突き出すリアス式海岸は、髪の毛を梳く櫛のようだからです。

 

天香久山は奈良盆地に突き出しています。葛城山も大和盆地に突き出しています。常陸太田も舌状台地にあります。どうやら古代人は平野部に突き出す山に神聖さを感じたようです。

櫛が入った神様として有名なのは櫛稲田姫がいます。素戔嗚尊の奥さんです。葦原中国から天下りした素戔嗚尊は、川から箸が流れてくるのを見て、櫛稲田姫と出会います。箸は細い棒ですので櫛を連想させます。他には櫛玉命と櫛玉姫がいます。これは長髓彦(登美彦)と三炊屋姫(登美比売)の別名と言われています。長髓彦は神武天皇に歯向かって討伐された神様で、三炊屋姫は神武天皇に降伏した饒速日尊(邇芸速日命)の奥さんです。

神名に「櫛(くし)」が入るのは、「奇(くし)」つまり不思議な力を表す古代の言葉と解釈されてきました。しかし平野に突き出す山を「くし」と呼び、信仰していたと考える方が分かりやすい気もします。

 

話が饒速日尊に飛んだことには訳があります。常陸国の久自国造は物部氏の一派で、饒速日尊の末裔とされているからです。葛城山に祀られているのも饒速日尊です。どうも久慈・櫛・串というのは、文字に記される前の日本人の太古の信仰を知る手掛かりになりそうです。

とまれ、古代人は神聖な山を「くじ」と呼んでいた。これは恐らく古墳が作られるようになるよりもずっと前からでしょう。そして古墳という文化が新しくやって来た時、古墳を「くじ・くし」と呼んだのでしょう。それに接尾語の「ら」がついて、鯨と呼ばれる古墳が日本全国にできたのではないかと思います。

 

参考 鯨に関わる伝説・逸話

「くじら」から始まる地名

 

Gyoda04

 

Gyoda03

 

埼玉古墳で最も古い稲荷山古墳。「稲荷山」も古墳によくついている名前です。鯨は古くは「イサナ」と呼ばれていましたので、くじら山→イサナ山→稲荷山という変遷があったのではないかと私は考えています。

 

追記

日光市に久次良町があります。日光山二荒神社を開山した勝道上人は久次良氏という古代の豪族であったらしいです。日光山もまたくじら山なのかもしれませんね。

宇都宮市の徳次郎町は、この久次良氏が移住した土地で、外久次良(とくじら)がなまって徳次郎になったという言い伝えがあるそうです。徳次郎宿で奥州街道と日光街道が分岐します。久次良氏は日光への入り口を押さえていたわけです。

 

Tsukuba01

筑波山。上のリストの中には筑波山の周辺が3つあります(石岡、下妻、筑西)。筑波山も「くじら」に縁がある山です。

 

葛城山、筑波山、日光山という古代から神聖視されていた山が「くじら」と呼ばれていたらしいことも分かりました。

天香久山と武蔵御嶽山には久慈真知命が祀られています。この2つのお山もくじら山の候補です。新潟県の弥彦山の神様は天香久山命です。くじらにちなむ地名は弥彦山周辺には今の所見つけられてはいませんが、天香久山と同じ神様とされているので、弥彦山もまたくじら山の候補です。調べれば「くじら」と呼ばれていた神聖な山はもっと見つかりそうです。

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コメント

いつも楽しく拝読しています。今回の「クジラ」特集、
独自の考察も併せてとても興味深いものでした。
「ら」が古代の美称であったという仮説にも、
串(櫛)が「奇し」に通じるというお話にも、
強くイマジネーションをかきたてられました。
優良の良、網羅の羅、色んな当て字がなされますが、
昔の人がどんな思いを抱いてその土地と接していたか、
想像するのも楽しいものだなと思いました。
リストには予想以上に多くの名前が並んでいました。
どこかに偏在していないというのが面白いのですが、
私は西の方の人間なのでやはり串本を思い出します。
あとは久慈に葛城といえば阪神タイガースです。
お二方とも関西のご出身ではないようですが・・・。
色んな要素が頭の中で一つに収斂されていったり、
また全国に散らばったりするのがエキサイティングです。
末筆になりますが、写真も楽しませて頂いています。
緑の変遷を眺めるのも良いものですね。それではまた。

a jelly doughnutさん、こんにちは

私の推測が正解かどうかはわかりませんが、なんらかの意味はあるのだろうと思います。

災害が起こりやすい土地を意味するのではないか?という観点から「くし」が含まれる地名を考察している人もいます。

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