私は以前に日本神話と四季の星座: おかくじら (cocolog-nifty.com) というエントリーを書きました。天孫系の神話は星の物語であり、太陽(天照大神)がそれぞれの神の星座を訪れることによって、季節が回るという世界観を古代の日本人は持っていたのではないかというものです。
星座と神様の対応関係です。
星座 |
太陽 |
黄道 |
男神 |
女神 |
星座 |
神 |
星座 |
神 |
夏 |
冬 |
冬至 |
射手座 |
伊耶那岐命 |
蠍座 |
伊耶那美命
|
秋 |
春 |
春分 |
ペルセウス座 |
邇芸速日命
|
アンドロメダ座 |
御炊屋姫
|
冬 |
夏 |
夏至 |
牡牛座 |
猿田彦 |
オリオン座 |
天宇受売命
|
春 |
秋 |
秋分 |
牛飼い座 |
邇邇芸命
|
乙女座 |
木花之佐久夜毗売
|
そしてそれぞれの神様が持っている性質です。
星座 |
太陽 |
黄道 |
男神 |
女神 |
星座 |
神 |
星座 |
神 |
夏 |
冬 |
冬至 |
伊耶那岐命 |
父 |
伊耶那美命 |
母→死 |
秋 |
春 |
春分 |
邇芸速日命 |
航海・収穫 |
御炊屋姫 |
妻→内部分裂 |
冬 |
夏 |
夏至 |
猿田彦 |
占い・政治 |
天宇受売命 |
祭・乳母? |
春 |
秋 |
秋分 |
邇邇芸命 |
武力・若さ |
木花之佐久夜毗売 |
娘・美→衰え |
この仮説は邇芸速日命の神話がほとんど伝わっていない弱点がありました。しかし古事記や日本書紀を分析するうちに、どうやら邇芸速日命の神話は、仁徳天皇の事績として形を変えて記録されているのではないかと考えるようになりました。
星座 |
太陽 |
黄道 |
男神 |
女神 |
星座 |
神 |
星座 |
神 |
夏 |
冬 |
冬至 |
伊耶那岐命 |
父 |
伊耶那美命 |
母→死 |
秋 |
春 |
春分 |
仁徳天皇 |
航海・収穫 |
大后石之日女 |
妻→内部分裂 |
冬 |
夏 |
夏至 |
猿田彦 |
占い・政治 |
天宇受売命 |
祭・乳母? |
春 |
秋 |
秋分 |
邇邇芸命 |
武力・若さ |
木花之佐久夜毗売 |
娘・美→衰え |
仁徳天皇の事績は説話的な内容が多く史実とはいいがたいと言われています。仁徳天皇の事績と伝えられるのは
1-疲弊した国民のために3年間税を免除した
2-仁徳天皇は艶福家で、大后(皇后)は嫉妬して天皇と対立した
2-1吉備海部直の女の黒比売と菜摘をする物語
2-2八田皇女に通う天皇に嫉妬して、皇后は祭祀のための御綱柏を船から捨てた
2-3大后は山城に逃亡、養蚕起源神話の類型、日本書紀では大后はそのまま宮には帰ってこない
2-4女鳥王と結婚しようとするが速総別王に横取りされてしまう
3-日女嶋の雁の卵(武内宿禰が登場する)、朝鮮半島の影響が伺われる物語
4-兎寸河の大木で作った大船、太陽の船の神話と考えられる
このように仁徳天皇の物語は、私が邇芸速日命の神格として予想した航海と収穫を象徴しています。大后も嫉妬で周囲を振り回して内部分裂を象徴しています。
また、大后は祭祀のために自ら船に乗って紀伊国まで出かけてお供え物を集めています。自らをないがしろにする仁徳天皇に対して怒りを表します。大后の抵抗によって祭祀が滞っており、仁徳天皇は大后をなだめようと四苦八苦します。このように大后石之日女は仁徳天皇からは独立した女性です。これは儒教の影響を受ける前の、強い権利を持った日本の女性の姿を現していると言えそうです。
古い起源をもつ神話ほど、記録では新しい時代に書かれるという原則があります。文字が伝わり、部族の歴史を記録する事業が始まった時、記録が残っている歴史のすぐ前の時代に、支配的な部族に伝わる神話が配置されます。周辺の部族や大国の影響を受けてできた新しい神話が古い時代に付け加えられていくのです。
旧約聖書はその傾向が顕著で最も古い記録は士師紀とされ、ヨセフやアブラハムの神話はユダヤ王国・イスラエル王国が成立してから、民族を統合するために成立した神話です。創世期はさらに新しくバビロン捕囚前後にバビロニアの影響を受けてできた神話だろうとされています。
仁徳天皇の神話は邇芸速日命の神話で、場所としては河内に伝わる神話ではないかと思います。邇芸速日命はおおらかで賑やかなのが好きなお父ちゃん。きれいな女に弱く、強い女房に振り回される。大阪は昔からこんな感じだったのでしょう。
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